においを感じる仕組み
鼻の奥にあるにおいセンサー
人間は呼吸をするときに、体外の空気と一緒ににおいの分子を吸い込みます。鼻から入ったにおいの分子は、鼻の奥の方にある嗅上皮の嗅神経細胞(においを感知するセンサーの役割)によって感知されます。嗅神経細胞は電気信号を発生させ、電気信号が嗅神経、嗅球、脳(大脳辺縁系)へと伝達し、「臭い」として感じることになります。
過去の体験がにおいの感じ方を変える
脳に届いたにおいの信号は、脳の大脳皮質で、「いいニオイ」「くさいニオイ」を判断しています。その為、“くさいニオイ”だから”くさい”のではなく、一人ひとりの人間の脳が”くさい”と感じるからくさいのです。
他人が”くさい”と感じる臭いも自分はあまり”くさい”と感じなかったり、その日の体調によってニオイの感じ方が違ったりするのは、人によって過去の体験がにおいの感じ方を変える為です。
これは、脳の大脳皮質が、個人の思考や過去の体験・記憶など後天的な情報を持っている為だといわれています。
人間は鼻ではなく、脳でにおいの違いや「いいニオイ」「くさいニオイ」を識別しているのです。
納豆が大嫌いな人は、納豆のニオイを嗅ぐだけでも嫌ですが、納豆好きの人にとって、おいしさを呼び起こす納豆のニオイは決して嫌には感じません。この様に、においに関する過去の記憶や経験がにおいの良し悪しを判断しているのです。
においの特徴
においを感じる感覚を「嗅覚」と呼び、人間の五感の一つです。視覚や聴覚は発達しますが、嗅覚は大きな発達がないとされています。
また人間の嗅覚の役割として、危険の予知(生命の危険に及ぶものの探知)、食糧検知(腐ったにおいや食べれるものの判別)、異性探知(体臭で異性を確認)などがあげられます。
においの感じ方には個人差がある
においの感じ方は人によって個人差があり、香水の匂いをくさいと感じる人もいれば、加齢臭のにおいはあまり気にならないという人もいます。においの好みも千差万別で、100人中100人とも好きなにおいは無いに等しいといわれています。
一般的に男性よりも女性の方がにおいの感覚は敏感です。また、においの感じ方は、体調や環境によっても左右されます。疲れていたり、風邪をひいたりするとにおいを感じにくくなり、お腹が空くとにおいに敏感になったりします。
この様に人間の嗅覚は性別や年齢によってかなり差があり、体調や環境などに影響を受ける感覚です。
においは長時間嗅ぐと慣れる
嗅覚はとても疲労しやすい(順応しやすい)感覚で、同じにおいを嗅ぎ続けるとそのにおいを感じにくくなくなります。どんなに良いニオイやくさいニオイでも長時間嗅ぎ続けると、全くにおいを感じなくなってしまうのです。
例えばペットの臭い。他人が訪問すると、犬や猫の臭いが気になりますが、飼ってる本人は毎日ペットと一緒に生活し毎日そのにおいを嗅いでいるため、においを感じなくなっています。
また良いにおいも同様です。香水など、付け過ぎると他人にとってはとても不快ですが、香水を毎日付けている本人は嗅覚がマヒし、香水を必要以上に付けていたりします。
特に自分の臭いは、毎日からだにまとっている為感じにくくなってしまいます。
また嗅覚は、あるにおいを感じなくなっていても、他のにおいがすると感知できるという特徴もあります。
嗅覚は訓練できる
調香師と呼ばれる職業が存在するように、嗅覚は訓練することができます。食品メーカーや化粧品メーカーで働く調香師は、何かの香りを様々な成分の調合により再現したり、花などの分泌物からオリジナルのよい香りをつくっています。
これら調香師の優れた嗅覚は、生まれつき持った能力ではなく訓練によって得た能力だとされる研究結果が発表されています。においを感じる仕組みで触れたように、においは脳で感じ過去の経験に左右されるので、様々なにおいを嗅ぐ訓練で嗅覚を発達させることができるといえます。
また、におい物質をフェロモンとして分泌している動物や昆虫は、種を残す為、においによって自分の存在をアピールしています。植物も繁殖のために花の匂いで昆虫を集め受粉させています。
このように五感の中でも嗅覚は、生物にとって生きるためにとても大切な感覚です。
体臭は病気のサイン
体臭は通常、汗の臭いであったり加齢臭など生理的な臭いであることがほとんどですが、中には病気が原因で発生する体臭というものが存在します。病気が原因で臭う体臭は、何度もシャワーを浴びたり、臭いの対策をとっても消すことはできません。
例えば、体内の毒素(アンモニア・アミン・インドール・硫化水素など)は、通常肝臓で処理されます。たたし、体調が悪いと、残った毒素を皮膚から排出しようとします。これが体臭となって臭うのです。
いままで感じたことのないニオイが急に自分や家族からした場合は、何かの病気を疑うのも必要です。様々な病気特有の臭いを知っておくことで、病気のサインに気づき早期発見につながります。
わかりやすい糖尿病の臭い
糖尿病になると、甘酸っぱい臭いがするといわれます。糖尿病になると、インスリンの機能低下の為、体内の糖の代謝機能が弱くなります。そうすると血糖のコントロールが不十分となり、「ケトン体」という物質が発生します。これが血液に溶け出し体臭として強く臭います。汗や尿の臭い、ときには口臭として、ちょっと甘酸っぱいような独特の臭いがします。
糖尿病は、からだの異常が体臭となって表れる代表的な例といえます。
様々な臭いの種類と疑われる病気
病気が原因で臭うのは体臭だけではなく、尿や便として出る場合もあるので注意が必要です。以下に病気の疑いのある臭いの種類をまとめています。
- 甘酸っぱい臭い
- 糖尿病、リウマチ、無理なダイエット
- アンモニア臭(おしっこ臭い)
- 肝機能障害(尿毒症)、貧血、痛風、腎機能低下
- 腐った卵の臭い
- 胃腸器系の病気(胃かいよう、胃炎など)
- カビくさい臭い※悪化すると、ニンニクと腐った卵が混ざったような臭い
- 肝機能の低下、慢性肝炎
- 血のような臭い
- 呼吸器系の病気(肺炎、気管支炎)
- 腐った肉のような臭い
- 口の中の病気(口内炎、歯槽膿漏)、鼻の病気(ちくのう症、副鼻腔炎)
- 頭があぶら臭い
- 脂漏性皮膚炎
体調が良くなく、上記の様な臭いを急に感じたら、病院で診察してもらい早期発見につなげましょう。